原子の構造
原子の構造概略図

原子の構造

この地球に存在する、空気や砂、人間などあらゆるものが原子と呼ばれる小さな粒子からできています。 今までに原子は110種類ほど発見されています。 この内、自然界に元から存在するものは100種類注1ほどです。 この100種類あまりの原子が複雑に組み合わさることによって様々な物質ができています。 それぞれの原子は元素記号で 表され、水素ならばH、酸素ならO、鉄ならばFeと表されます。

下の図はヘリウム(He)原子の模式図です注2。 原子は原子核とその周りを回っている電子からできています。 原子核は陽子と中性子と呼ばれるものからできており、陽子は正の電荷(+の電気)を持っています。 中性子は電荷を持っていません。電子は負の電荷(−の電気)を持っています。 このように正電荷を持つ陽子と負電荷を持つ電子が同じ数だけ存在することによって 原子は電気的に中性(電荷が0)注3となります。

注1:人工的にしか作れない原子もいくつか見つかっています。例えば原子番号103、ローレンシウムがそうです。 現在でも新しい原子を作る実験が続けられているようです。

注2:あくまでこの図は模式図です。本当にHe原子がこのような形をしているわけではありません。 このようなイメージで大体原子を考えれば良いですよ、というものです。

注3:例えばヘリウムは陽子2個、中性子2個、電子2個からできています。 陽子は+の電荷を持つので+2の電荷を持ちます。電子は二つあるので-2の電荷を持ちます。 これより全体の電荷は+2-2=0となり、互いの電荷を打ち消します。 全ての原子はこのように電気的に中性になっています。
He原子の模式図

電子と電子殻

先ほど原子の周りには電子があると言いましたが、実はその電子の数が原子の性質に 大きな影響を与えています。つまり原子の種類が違えば、電子の数も違うということです。 このように原子の性質を考える上で電子について考える事が非常に大切になります。

原子は電子を入れることができる"部屋"のようなものを持っています。 原子核に近い部屋から、それぞれの部屋にはK殻、L殻、M殻という名前注4が付けられていて、 入れることのできる電子の数が異なります。 K殻は2個、L殻は8個、M殻は18個までの電子を入れることができます。 このような電子が入ることができる部屋のようなものの事を電子殻と言います。

注4:ここでは省略していますが電子殻にはN殻、O殻、P殻、Q殻もあります。 またそれぞれの電子殻はさらに細かい軌道に分ける事ができます。このあたりは量子力学の 教科書の始めの方に書いてあります。

それぞれの電子殻に入ることができる電子の数には規則性があり、それを式で表すと、 内側からn番目の電子殻に収容可能な電子の数は2n2と表せます。

さて電子殻にはいろいろありますが、それぞれの殻では何が違うのでしょうか? これを一言で言うと、各電子殻に入っている電子の持つエネルギーが違うということです。 例えば手に持ったボールを離すとボールが落ちるという"運動"をするように、 電子も原子の周りを回る、つまり"運動"しています。
原子核に一番近い部屋(L殻)はちょっと狭いので、あまり運動していない電子しか入れません。 つまりエネルギーの低い電子が入ることになります。
反対に原子核から遠い部屋ほど広くなるので、結構運動している電子でも入ることができます。 つまりエネルギーの高い電子でも入ることができます。

また、原子の一番外側の電子殻に入っている電子の数は原子の性質などに深く関わっているので、 一番外側の電子殻に入っている電子を特に最外殻電子と 言います。


原子核の構造

原子核は陽子中性子とから成り立っています。 陽子は正の電荷(つまり+)をもち、中性子は電荷をもっていません。 中性子は陽子同士、つまり正電荷同士の反発を抑える糊のようなものです。

下の模型は原子番号3、Li(リチウム)です。 見ての通りK殻に電子が2個、L殻に1個はいっています。中性子、陽子の数はそれぞれ3個です。 イメージとしては太陽系をイメージすると良いでしょうか。 太陽(原子核)の周りを地球や火星と言った惑星(電子)が回っているという感じです。 太陽系と原子。全然大きさが違うのに、その仕組みがなんとなく似ているというのは面白いですね。

さて上で電子殻の説明をしました。電子殻はたくさんあるのに、リチウムではL殻までしか電子が入って いません。何故でしょう?これは注3で少し説明しましたが原子は電気的に中性になるので、 陽子と同じ数だけしか電子がないことになります。部屋がたくさんあっても、 全ての部屋に電子があるというわけではないという事ですね。化学では全ての現象はエネルギーが 低い方、低い方にいこうとするのでエネルギーの低い内側の電子殻から順に電子が入っていくことになります。