原子量、分子量、式量、物質量
原子はとても小さい粒子です。元素の中でもっとも軽い水素原子1個の質量は
約1.7x10-24gです。数字で書くと
0.000 000 000 000 000 000 000 0017(g)となります。こうしてみるといかに原子1個が小さいかわかると思います。
声にさえ出せないのではないでしょうか?
このように小さい原子を1個単位で扱うと非常に面倒なので、化学では原子を一定のまとまった数として扱います。
このとき一定のまとまった数として6.02x1023個をつかいます。 これは質量数12の炭素原子126Cの12gの中に含まれている原子の数をもとにしています。
このような6.02x1023個の粒子が集まった集団を1mol(モル)といいます。 だから炭素原子1molの 中には炭素原子が6.02x1023個含まれています。
原子量や分子量、式量の値は126Cに対する相対的な数値です。だから原子量や分子量、式量自体にはグラムといった単位はつきません。
- 原子量
- 原子量とは、ある原子1molの質量のグラム単位をとったものです。だから炭素の原子量は12となります。
またAl(アルミニウム)の原子量は、Al1molで27gなので27となります。
- 分子量
- 分子量とは、ある分子1molの質量のグラム単位をとったものです。O2(酸素分子)
1molの質量は32gとなるので、O2の分子量は32となります。同様にCl2(塩素分子)の分子量は71となります。
またCH4(メタン)など複数の原子からなる分子は構成元素の各元素の原子量を合計したものが分子量となります。
CH4の分子量は[12(炭素の原子量)+1(水素の原子量)x4=16]となります。
- 式量
- 式量は、イオンからなる物質1molの質量のグラム単位をとったものです。NaCl(塩化ナトリウム)の式量は構成元素の各元素の原子量 を合計したものです。Na+はNa原子にとても軽い電子が1個加わっただけなので、
Na+=Naとします。だからNaClの式量は[23(Naの原子量)+35.5(塩素の原子量)=58.5≒59]となります。
- 物質量
- 物質を扱う場合、質量や体積の他に一定のまとまった数の集団にもとづいた、物質量を使います。物質量の単位はmol(モル)です。
下に代表的な原子量、物質量、式量を表にしました。(概数)
元素名(元素記号) |
原子量 |
分子名(分子式) |
分子量 |
イオン名{イオン式} |
式量 |
ヘリウム(He) |
4.0 |
窒素(N2) |
14x2=28 |
硫酸{H2SO4} |
1x2+32+16x4=98 |
マグネシウム(Mg) |
24 |
塩素(Cl2) |
35.5x2=71 |
炭酸ナトリウム{Na2CO3} |
23x2+12+16x3=106 |
硫黄(S) |
32 |
エタン(C2H6) |
12x2+1x6=30 |
水酸化カルシウム{Ca(OH)2} |
40+17x2=74 |
カルシウム(Ca) |
40 |
水(H2O) |
1x2+16=18 |
硝酸銀{AgNO3} |
108+14+16x3=170 |
鉄(Fe) |
56 |
一酸化炭素(CO) |
12+16=28 |
塩化アンモニウム{NH4Cl} |
14+1x4+35.5=53.5 |
銅(Cu) |
63.5 |
アンモニア(NH3) |
14+1x3=17 |
硫酸バリウム{BaSO4} |
137+32+16x4=233 |
亜鉛(Zn) |
65 |
酢酸(CH3COOH) |
12x2+1x4+16x2=60 |
塩化カリウム{KCl} |
39+35.5=74.5 |
ヨウ素(I) |
127 |
メタノール(CH3OH) |
12+1x4+16=32 |
酢酸アンモニウム{CH3COONH4} |
24+7+32+14=77 |
原子量のだし方
天然に同位体が存在する元素は1molの原子を見てみると、その中には一定の割合でそれぞれの同位体が含まれています。 塩素原子を例にとってみると、一定の塩素の中に3517Clは75.77%、3717Clは24.23%含まれています。 だから各同位体の1mol質量は35gと37gです。よって天然の塩素原子1molの質量は下のようになります。
35 |
x |
75.77
100 |
+ |
37 |
x |
24.23
100 |
= |
35.45(g) |
また、そのほかの原子についての原子量は周期表を見て確認してください。
元素名の下に書かれている数値が原子量です。例えばLiなら6.9、Beなら9.0です。問題として出題される時には
原子量は与えられるので全て覚えておく必要はありませんが、大体の感じは覚えていた方がいいかもしれません。
気体1molの体積
気体の体積は温度や圧力の影響を受けるので、まず標準となる状態を決める必要があります。その標準となる状態を、
標準状態と言い温度は0℃(273K)、圧力は1atmとする。
ところでatm(アトム)とは圧力の単位のことで1atm=1気圧(1013hPa{ヘクトパスカル})となります。
厳密に言えば違うのですが、高校レベルでは気体の1molの体積は標準状態においてすべて22.4l(リットル)です。 これは分子の大きさは気体の体積に比べて無視できるほど小さく、分子間の分子間力といった相互作用も小さいので
無視しています。そうして考えると1molの気体の体積は全て22.4lとみなせます。また、このようにみなせる気体を理想気体といいます。
実際の気体には分子間力などが働くため理想気体のように標準状態で22.4lというわけにはいきません。
このように気体1molの体積はその種類によらず、標準状態で22.4lとなります。
よって同温、同圧、同体積の気体の中にはすべて同数の分子が含まれています。
また、このことから気体の体積がわかれば気体となっている物質の分子量や気体の密度がわかります。
例えば、標準状態で容積が22.4lの真空の容器の中に窒素を満たすと、容器の重さを除いた質量は28.0gとなります。
よって窒素の分子量は28となります。また窒素の気体の密度(g/l)は、下の式より1.25g/lとなります。
28.0(g)
22.4(l) |
= |
1.25(g/l) |