ここでは炎色反応について考えてみます。まずは、光について基本的な事柄を確認しておいてください。→光について
他の自然現象のように、光が出るという現象にも仕組みがあります。 光が出るという現象には原子や分子などの中の電子が大きく関わっています。

ここで原子の構造について復習しておきましょう。 原子核の周りに、電子殻と言われる、電子が存在することができる「電子の部屋」のようなものがあります。 電子は電子殻以外には存在できません。 そして、一番エネルギーの低い普通の状態(=基底状態という)では、原子核に近いところから順に電子が入ります。 また、電子殻に入ることのできる電子のエネルギーは決まっており、それぞれの電子が持つエネルギーは連続ではなく、 飛び飛びの値を持っています。電子殻についてはこちらで説明しています。

まずは基底状態の原子を考えます。そこに、周りから何らかの方法(例えば加熱するなど)でエネルギーを与えると、 電子はどうなるでしょうか。エネルギーを与えられた電子は動きが激しくなります。 電子殻に入ることができるエネルギーは決まっているので、エネルギーをもらった電子は今いる電子殻から もっとエネルギーが高くてもいることのできる別の電子殻に移動しなければなりません。

こうしてエネルギーを得た電子は、今までいた電子殻から別のもっとエネルギーの高い電子殻へ移動します。 そうして、電子は原子核から離れていくわけですが、そのまま温度の高い(=エネルギーが高い)状態が続くと 電子が元いた電子殻から離れている状態でも存在し続けることができます。

しかし、いずれ温度が下がって(=エネルギーが低い)くると、 電子はエネルギーが高いままでは不安定なので、エネルギーを放出して元の電子殻に戻ろうとします。 このとき、もっているエネルギーを光として放出します。この光が炎色反応に関係しているというわけです。 これを模式図で示したのが右の図です。
これはリチウム原子の場合です

*:この図では始め、K殻とL殻に存在していた電子が、エネルギーを受け取りよりエネルギーが高くても 存在することができるM殻に遷移(移動)しています。そして、温度が下がり、電子が元の電子殻に戻る時に、 今持っているエネルギーを光として放出し、元の状態に戻ります。
ただ注意して欲しいのは、実際の炎色反応で見える光が図のようにM殻からL殻への遷移に因るものかどうかは 分かりません。M殻からK殻かもしれませんし、それ以外かもしれません。一般的に炎色反応は、 励起状態と基底状態のエネルギー差から説明できるということを示しているだけです。

このような励起状態と基底状態のモデルに基づいて炎色反応を考えてみましょう。 ガスバーナーによりエネルギーを与えて、原子(イオン)中の電子を より外の電子殻へ移動させます。このように電子が、通常の位置よりも原子核から遠く離れている 状態のことを励起状態といいます。 この励起状態から基底状態に戻るときに 放出されるエネルギーが炎色反応として観察されます。 また、この励起状態と基底状態のエネルギー差は原子に固有なのでそれぞれの原子毎に 決まった炎色反応が観察できます。 ちなみにガスバーナーの酸化炎を使用して、 原子(イオン)を励起状態にさせます