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4.6 勉強の応用例(数学)

この節では勉強を通してどのようなこと学べるのか、それがどこに応用できるのかをみていきます。 具体的には、数学や理科で学習するグラフをなぜ学ぶのか、そしてそこから何が得られ、 どこに応用できるのかをみていきます。

4にAさんからDさんそれぞれのテストの点数の変化を示しています。 まずはこの図から、誰が一番頭が良いか考えてみてください。またその人が頭が良いと選んだ理由も考えて みてください。

図 4: テストの点数の変化
\includegraphics[width=43mm]{DDdata/g1a.eps}
(a) Aさんの点数
\includegraphics[width=43mm]{DDdata/g1b.eps}
(b) Bさんの点数

\includegraphics[width=43mm]{DDdata/g1c.eps}
(c) Cさんの点数
\includegraphics[width=43mm]{DDdata/g1d.eps}
(d) Dさんの点数

これらのグラフを直感的に見ると、Aさんの点数は増加傾向に、 Bさんは点数の低いところでほとんど変化せず、Cさんはいったん点数が伸びた後減少に転じ、 Dさんは常に高いレベルを維持しているようにみえます。 だから直感的にはAさんかDさんが頭が良いかなと言えそうです。 さてこの直感は果たして本当に正しいのでしょうか。

実は図4は、表1に示している 全て同じ点数の変化をグラフにしています。 ただし(a)(b)は6回目までを、(c)(d)は8回目までの点数の変化を示しています。 そしてそれぞれのグラフの違いはグラフの縦軸を何点から何点の範囲にするかだけです。 通常のテストは100点満点なので、50点近辺だけというごく小さい範囲でしか変化していないことが 分かります。



表 1: テストの点数の変化
回数 1 2 3 4 5 6 7 8
得点 50 50 48 49 50 53 52 49


表の数値だけを見ると、おそらく多くの人がテストの点数に大きな変化は見られないと結論を下すはずです。 よってテストの点数が上がる傾向にあるのか、下がる傾向にあるのかなどの判断は下せません。 しかしグラフにすると、書き方によっては異なる結論を導き出せてしまいます。 図4(a)のように書けば、点数が上がる傾向にあるように見えてしまいます。 つまりグラフ作成者の「意志」でグラフを見る人の印象は大きく変わるということです。

今回のように元々は全く同じものでも、表現方法によって印象が変わることは良い面と悪い面を持っています。 良い面としては、自分が伝えたいこと、主張したいことをグラフに込めることができます。 これはグラフに限らず、絵画や音楽などにも言える事です。もっと身近な例ではCMがその典型例です。 品物は同じでも、どのようなCMにするかで消費者のその製品に対するイメージを操作することができます。 反対に悪い面としては、本来は良くないものでも良いように見せかけることができる、 つまり騙すことが可能であることです。

これまで見てきたように直感的な判断のみに頼ると本来とはかけ離れた結論に達する可能性があります。 これは数学に限った問題ではなく対人関係においても、また品物などを選ぶときでも問題になることです。 正確に判断するためには普段の生活や数学、理科の学習を通して順序立てて考えられる力を身に付ける ことが必要です。

そしてこれを数学以外の場面に応用するために重要なことは、グラフの知識だけでなく 自分の伝えたいことや意志、主張を考え、はっきりと認識することです。 これは自分が情報を発信するときに重要なのは言うまでもありませんが、 情報を受ける側のときにも騙されない、また意図を理解するために必要なことです。


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