それでは何故、学習者本人の立場で問題を解決しようとするのかをみていきます。 学習者(例えば生徒)の立場から言えば、もちろん学校や親、地域、行政といった「他人」が自分を 効果的に教育してくれるのが一番楽です。しかしそれはあまり期待できないことを認識する必要があります。 図1にそれぞれの立場の特徴を示します。
各立場を考える上で重要な要素として、問題の単純さと解決までにかかる時間の二つが考えられます。 もちろん問題が単純であれば簡単に解決でき短時間で済みます。そのためできる限り、単純で解決に時間の かからない立場で問題を考える必要があります。それでは学校、親や地域、学習者本人の それぞれの特徴についてみていきます。
まずは学校の特徴をみていきます。中学校までは義務教育として行われており、 義務教育の内容は常に見直されていますが、今すぐに学校で学ぶ内容が変わることは決してありません。 早くても年単位の時間がかかります。また教育の内容だけでなく、学校の先生が急に入れ替わることもまずありません。
学校を変えるには複雑な問題がいくつもあり、それらを解決するには長い時間がかかります。 これは今現在学校に通っている人にとっては致命的なことです。 なぜなら卒業してから学校や教育内容が変わっても今生徒の人にとっては全くと言っていいほど意味が ないからです。
次は親や地域についてですが、これも学校と同じことが言えます。 親や地域がすぐに、なおかつ効果的に変わることができれば学習者にとってそれほど良いことはありませんが、 そんなことはまずありえません。
学校や親などの立場に対して、学習者本人の抱える問題は比較的単純です。 学習者本人、つまり自分自身を変えることももちろん難しいですが、 学校など他人を変えることよりは簡単す。 そして自分が変わればその効果はすぐに現れます。 このように学習者本人を改善することは他に比べ簡単で、即効性が期待できます。
本書では周りの環境が変わるまで待つことのできない中学生や高校生が対象なので学校や親を変えるという 方法はとれません。必然的に学習者本人の立場に立ち、学習者本人の改善法を考えていくことに なります。 自分自身を改善しなければいけないと自覚することは勉強において大変重要なので、 もう少し学習者本人を改善するべきであるということを深く考えていきます。