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4.3 勉強の意義(概論)

そもそも勉強とは何なのか。勉強はしなければならないものなのか。この問題に「正確」に答える事は容易ではありません。 勉強の必要性は人の数だけあります。つまりこの問題について正確に答えようとするならば、日本人だけでも 1億を越える数の答えが必要となります。

例えば、中学生の段階でこの問題に突き当たったとしましょう。 中学生の段階で自分の将来の「全て」が分かっていることはほとんどあり得ないので、 どんな勉強が「確実」に役に立つか正確に分かりません。 また、勉強が「確実に役に立つ」かどうか分からないのと同様に、「役に立たない」かどうかも断定できません。 だからよく言われているような、勉強は将来役に立つからしなければならないという理論は厳密には成り立ちません。 しかしこれと同様に、勉強は将来役に立ちそうにないから勉強しなくても良いという理論も成り立ちません。

まずは勉強とは何かを考えていきたいと思います。勉強は何のためにするのでしょうか。 テストで点数を取るため、高校、大学に入るため、義務だから。これらのことはあくまで勉強の一面でしかありません。 勉強の本質はこれらのことではありません。 勉強の本質には大きく分けて3つの側面があります。思想的な側面、知識的な側面、そして技術的な側面です。

思想的な側面の例を挙げれば、自分はどこから来て、どこへ行くのか。 どう生きていけば良いのか。どう考えれば良いのか。今の自分が完璧であれば、勉強はいりません。 しかし自分の中に満たされない何かがあるのならば、それを解決するための方法を考えるのに勉強は応用できます。

知識的な側面は説明するまでも無いでしょう。人類が誕生して以来、積み上げてきた知識を伝承し、 将来に伝えることも重要です。そういう伝承が行われているから今日の文明があるのです。 だから携帯電話もあるし、生きるのに困らない環境があるのです。

そして何よりも自分自身がより良く生きるために知識は必要です。普段の生活、仕事をするときでも遊ぶときでも勉強は 応用できます。具体例を挙げれば、数学の割合が苦手な人がいますが、割合は普段買い物をすれば自然に身に付く知識です。 パーセントなどの割合が分からなければ、割引された商品が何円になるのかレジを通すまで分からず計画的な買い物ができません。 その結果として自分が損をしたり、無駄なことをしたりしてしまうかもしれません。レジで値段を間違われても気付かないことすら あるかもしれません。 もちろんお金が無限にあれば好きなだけ買えば良いのですが、それだけお金を持つことは容易ではないでしょう。

また、仕事などで何か新しいことをする必要が生じたときには、勉強をしたことが必ず役に立ちます。 それは勉強というのは「自分の知らないものを獲得する」という行為だからです。 少し話が逸れますが、自分の知らないものを獲得するというのは勉強に限った行為ではありません。 日常生活や趣味でも頻繁に行われることです。だから日常生活や趣味で自分の知らないものを獲得してきた人は、 それを勉強に生かすことができます。こうして結果的に普通に生活し、趣味をしているだけで有る程度勉強ができるようにも なります。

最後に勉強を考える上で欠かすことができないのが技術的な側面です。これはスポーツと似ています。 例えば、九九などが良い例です。自然数のかけ算であれば、かけ算がなくとも足し算で代用できます。 具体的に書けば$9\times 4$はかけ算を使わなくとも$9+9+9+9$という足し算で計算できます。 確かにかけ算がなくても足し算で計算できますが、それでもわざわざ苦労してかけ算を勉強するのは、 かけ算を反復練習することによって暗記すれば非常に効率が良くなるということを多くの人が実感しているからです。 良く使うものは反復練習して、すぐに出てくるようにすれば非常に効率が良くなります。これは勉強に限らず、遊びでも仕事でも スポーツでもそうです。ある動作を反復練習することによって、思考することなく即座に対応できるようにする。 こうすれば飛躍的に効率が高くなるのです。スポーツではいちいち頭で考えていては間に合いませよね。

また技術的な側面として忘れてはならないのが、新しいもの獲得する能力という側面です。 例えば、社会科のテストで点数を取るためにはその知識が必要か不必要に関わらず大量の知識を覚えなければなりません。 一見するとこの大量の知識を覚えることは無意味に思えるかもしれませんが、大量の知識を覚えるという技術の練習になります。 この物事を覚えるという技術は社会科でしか使えないでしょうか。他の多くの場面で役に立つことは言うまでもないでしょう。 そういう意味では古典などの暗記も決して無駄にはなりません。

このように勉強にはじっくり考える必要のある思想的な部分、生きていく知恵となる知識、そして作業を 効率良く進めるための技術的な側面があります。これらの分野を突き詰めていくことで人間としてより成長でき、 問題に遭遇しても解決しやすくなります。

このように成長していくことが目的であり、その手段が勉強です。目的を達成しさえすれば良いのだから、 勉強以外の方法で達成できるのならそうすれば良いです。 しかし、勉強に代わる手法がないのであれば勉強は妥当な方法であり、勉強をする意義は十二分にあると言えます。


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