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10.9 何かを極める〜足し算〜

勉強をする上で習熟度や上達方法を考えることはとても大切です。どのような勉強方法で、どこまで練習すればテストで 何点くらい取れるのか。ある分野をどこまで練習すれば次の分野に進んで良いのか。 このようにどのような方法でどれだけ練習すれば良いのかという問題は常に付きまといます。 この問題に対して自分なりの基準を作ることが必要です。

この問題を考えるために一つのことを極める過程を分析することは有効です。一つのことを極めるためには、 どのような方針の元で、どういう方法でどれだけ練習すれば良いのか考えたいと思います。 そこで今回は簡単化のために一桁の足し算を例に挙げます。おそらく読者のほとんどの人は足し算ができると 思います。自分が足し算に対してどのように接して来たか比べてみてください。

図 8: 足し算ができるようになるまで
\includegraphics[width=70mm]{DDdata/add.eps}

一桁の足し算と言うと、小学校一年で習うこともあり、そんなのは簡単だと言う人も多いと思います。 しかし一桁の足し算であっても極めることはそんなに簡単なことではありません。 それでは具体的に足し算を極める過程をみていきましょう。

まずは足し算ができる必要があります。足し算ができるまでに必要な能力を箇条書きにしています。 また図8にはそのイメージ図を示しています。


\begin{enumerate2}
\item 実生活や勉強を通して18まで数えられるようになる。(数字の...
...\item 足し算をおはじきや指などの助けを借りてできるようになる。
\end{enumerate2}

この段階ではまだ抽象化された数字だけを用いて計算できません。 具体的なものを用いれば足し算ができる状態です。例えば図8に示すように、りんごやれもんの ような具体的な物の数が数字に対応していることを知っており、そしてくまの問題やおはじきの問題のように 実際に混ぜて、その結果をどうなるかを数えれば足し算ができる状態です。 この状態では一問の計算に1分ぐらいかかっても不思議ではありません。 一応足し算ができるとはいえ、これでは不便で仕方がないのでさらに計算効率を上げる必要があります。 次の段階を箇条書きにしています。


\begin{enumerate2}
\item 抽象化された数字だけで繰り上がりのない計算ができるよう..
...その都度考える。
\item 反復練習により完全に計算結果を覚える。
\end{enumerate2}

この段階は効率、つまり計算時間を短縮するためにおはじきや指と言った具体的なもののサポートを打ち切り、 自分の頭の中だけで計算します。頭の中で計算できるようになれば一気に効率を上げることができるようになります。 そしてさらに計算結果を覚えれば飛躍的に効率が向上します。 例えば3+4をその都度計算するのではなく、答えを覚えてしまいます。 そうすれば一気に計算時間が短縮されます。一問あたり10秒もかかず、数秒でしょう。 普通はここまででくれば十分かもしれませんが、さらに効率を上げることを考えます。

ここから先はなかなか極める過程を列挙するということは難しくなります。 足し算の計算時間を短くするのに必要なポイントを挙げ、それに対する改善方法を示すことにします。


\begin{enumerate2}
\item 問題を見てから答えを思い出すまでを早くする。
\item 答えを書く時間を短くする。
\item 集中力を鍛える
\end{enumerate2}

この段階で、問題を見てから答えを出すまでを早くするには、反復練習を行えば良いです。 単純に反復を繰り返して、答えをすぐに思い出せるようにすることの他にも注意点があります。 一般的には計算するときに、音声を介在していることが多いです。 例えば足し算をするときに「にぃーたすさんは、ご」と頭の中で言っていては効率が悪いです。 このような音声を介さず、式を見ただけで数字がイメージできる必要があります。 これは意識して練習する必要があります。 式を見て、一瞬で答えのイメージが浮かぶまでひたすら反復練習します。

次にイメージした問題の答えを書くためにかかる時間の短縮について考えます。 まずはきれいな字では遅いです。早く答えを書くためには汚い字だが最低限判別できる字を書く必要があります。 さらに時間を短縮しようと思えば、数字の書き順を最適化することも考えられます。 4や5、7は二画なのでこれを一画で書く、早く書くと2と3の区別が難しくなるので、 区別できるように書く練習を意識的にするなどの対策が必要になります。

今までは一つの問題を早く解くための方法を見てきましたが、 次は何問も大量に解く時に有効な方法をみていきます。それは問題の先読みを行うことです。 ある式を見て答えを書いて、それから次の式を見て答えを書いてという一つずつの動作を順番に行う方法では壁にぶつかります これを越えるために、ある式を見て答えを一瞬でイメージしその答えを書きながら、次の式を見てその答えをイメージし、 今書いている式の答えが書き終わったらすぐに次の式の答えを書くようにします。 もちろん次の式の答えを書いている時は、次の次の式の答えをすでに考えています。

このように先読みをすれば、手が常に動き続けるという状態になります。 この状態で間違える事無く手を動かし続ける、つまり答えを途切れることなく書き続けるのが最速です。 この状態になるためには意識的に自分の計算方法を改善し、相当な反復練習が必要となります。 これはスポーツの練習に通ずるものがあるでしょう。

そして技術的な部分と共に、精神的な部分も強化する必要があります。 短時間で計算を行うには集中しなければならず、いくら技術的に優れていても速く解けません。 計算をするときに集中できる状態を作れるようになる必要があります。 また、1度に多くの計算を行う場合は疲れのため、無意識に計算ができずに音声を介在しがちです。 これを克服するにはひたすら反復練習をして慣れるしかないでしょう。 何時間も計算をする場合には計算体力が必要になります。

このように一桁の足し算であっても、極めることは大変難しく高度な事が必要で、時間がかかることが分かると思います。 ただし、ここまでする必要はない場合がほとんどです。計算を早くすることに膨大な時間をかけるよりは、 他に考えるべきことはたくさんあります。計算は間違えずできればそれほど速度を問われることはないので、 どこまで計算速度を磨くかは自分で決定する必要があります。


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