ここでは学校や塾では決してしない勉強について見ていきます。 学校などで教えてくれないことはたくさんありますが、この節では英語の聞き取りを例に挙げます。 特にrightやlight、prayやplayのようなRとLの聞き分け、およびmap, hot, bugのような日本語のアに近い英語の母音の聞き分け について取り上げます。
なぜこのような学校でやらないことを取り上げるのかというと、 学校などでは教えてくれないということは、もし必要なら自分でしなければならないからです。 いつまでも他人に頼っているばかりでは駄目だと言うことです。 自分自身でしなければならない勉強もある、ということを知ることは大変重要です。
そもそも例に挙げたような英語の聞き分けを学校で教えてくれないのでしょうか。 学校でもR/Lの発音などの方法はある程度教えてくれるでしょう。しかしその程度の授業でR/Lの聞き分けができるように なるのでしょうか。多くの人は残念ながらR/Lを聞き分けられるようにはなりません。 その主な理由はRとLの音は日本語にはないからです。 多くの人がRもLもラ行に対応すると思っており、rightもlightも同じ「ライト」と発音します。 しかし英語ではこの二つははっきりと区別されます。 英語の発音を学習することは日本語に無い音を学習することであり、 本来ならばもっと時間をかけても良いはずですが、なぜか学校では聞き取りの練習をさほどしません。それはなぜでしょうか。
学校で英語の聞き分け練習を詳しくやらない確かな原因は分かりません。学校の先生が単純にできないだけなのか、 そもそも聞き分けを重要だと思っていないのか本当のところは分かりません。 しかし自分でR/Lや母音の聞き分けを練習して、なぜ学校でやらないのか少し分かりました。 その理由は、単に時間が多くかかるからです。つまり学校では時間の制約からすることができず、 そもそも学校でやるような内容でもないからです。それではR/Lや母音の聞き分け練習について詳しくみていきましょう。
まずはR/L練習プログラムの概要を説明します。R/L練習プログラムは、BLUE BACKSの「英語リスニング 科学的上達法」 に収録されたCDを用いました。またATRインターネット公開実験(http://exp.atrcall.jp/)から R/L聞き分けテストプログラムをダウンロードできます。これは練習プログラムとほぼ同じ構成です。
さてR/L練習プログラムは4つあり、それらを1セットとして練習します。それぞれの練習プログラムは144問からなり、 1セットで576問となります。各練習プログラムはそれぞれ全ての問題が終わると正答率が表示されます。 図9に各練習セット数におけるそれぞれの練習プログラムの正答率とそのセットでの平均点を示しています。
図9に示すように、始めの頃の正答率は65%程度であり、約10年英語を勉強してこの程度です。 この結果は単に今まで聞き取り練習をしてこなかっただけなので、英語が難しいとかそれ以前の問題です。 まずは練習を行いどのように正答率が変化するのか調べました。 ここで一つ注意して欲しいのは、R/L聞き分けに必要とする時間は年齢や個人差が大きく影響していると 考えられることです。全ての人が図9に示すような変化を示すとは限りません。
練習の結果徐々に聞き分けができるようになりました。練習を40セット行った時点では90%程度の正答率まで上がりました。 このように今まで何年もかけて英語を勉強したにも関わらずたかだか65%だったものが、40セット程度の練習で90%まで上げることができ、確実に成果がでます。 また聞き分けと共にR/Lの発音についても分かるようになってきました。このように日本語に無い音を聞き分けることは、 発音をするときにも役に立ちます。それでは確実に効果が上がるのに、学校でしないのではなぜでしょうか。
40セットの練習を行うのに大雑把に言って60時間かかっています。 実際はもっとかかっているかもしれません。公立の中学校では年間に英語の授業は100〜200時間程度でしょう。 おおまかに3〜4ヶ月授業を潰してR/L練習だけするという計算になります。なるほど学校でR/L聞き取り練習はできないわけです。 また練習プログラムはパソコン上でやるので1人で学習できます。 コツを教えてもらって聞き取れるようになるものでもないので、 自転車の練習やスポーツのようにできるようになるまで自分で練習するしかないのです。
R/L聞き分けは練習にかなりの長期間を必要とすることが分かりましたが、これだけでは英語はやっぱり 難しいんだと思って諦める人もいるかもしれません。そこで英語の他の音、今回は母音の聞き分けについて 練習を行いその成績の変化を図10に示します。
母音練習プログラムは3つの練習プログラムを1セットとしています。1つの練習プログラムは54問から なり、1セットで計162問です。1セットあたりの時間は15〜30分程度です。慣れれば15分以内で できます。練習は計17セット行っています。時間は6時間程度です。 R/Lの練習に比べて圧倒的に短い時間ですが、16セット目には正答率が100%になりました。 その後は再び90%後半ですが、R/Lに比べれば上達も速く簡単だと言えるのではないでしょうか。
R/Lと母音の聞き分け練習を見てきましたが、このように練習によって必ず成果はあがります。 しかし成果が上がることであっても学校でするのに相応しくない学習もあるのです。 学校でしないからと言ってしなくても良いのではなく、自分の目標や目的を達成するために必要であれば、 自分でやるしかありません。