一桁の足し算を極める
勉強をする上で習熟度や上達方法を考える事は非常に大切だ。 どのような勉強方法で、どこまで習熟すればテストで何点くらい取れるのか。 ある分野をどこまで習熟すれば次の分野に進んで良いのか。 このような疑問は常に付きまとう。これに対して自分なりに基準を作ることは必要不可欠だ。
これらの問題を考えるのに一つの分野を極める過程を分析することは有用だろう。 そこで今回は簡単化のために一桁の足し算を例に挙げ、これを極める過程を考えることにする。 一桁の足し算と言うと、小学校一年で習うこともあり、そんなのは簡単だと言う人も多いと思う。 しかし一桁の足し算であっても、それを極めることはそんなに簡単なことではない。 それでは具体的に足し算を極める過程をみていくことにする。
- 実生活や勉強を通して18まで数えられるようになる。(数字の概念が無くても可)
- ある数にある数を加えることを実生活や勉強を通して実感する。(数字の概念が無くても可)
- 数の概念を1や2のような数字と結びつけて考えられるようになる。
- 足し算という演算が数を加えることを意味していることを理解する。
- 足し算をおはじきや指などの助けを借りてできるようになる。
この段階ではまだ抽象化された数字だけを用いて計算できない。 実生活や具体的なものを用いれば足し算ができる状態。この状態では一問の計算に 1分ぐらいかかっても不思議ではない。これでは不便で仕方がないのでさらに計算効率を 上げる必要がある。
- 抽象化された数字だけで繰り上がりのない計算ができるようになる。
- 繰り上がりができるようになる。
- おはじきや指などのサポートを減らしていく。
- 時間がかかっても頭の中だけで計算ができる。
- 計算の結果を覚える。忘れた時はその都度考える。
- 反復練習により完全に計算結果を覚える。
このようにおはじきや指と言った具体的なもののサポートを打ち切り、自分の頭の 中だけで計算するようになると一気に効率を上げることができるようになる。 それは言うまでも無く、計算結果を覚えることだ。例えば3+4をその都度計算するのではなく、 答えを覚えてしまう。そうすれば一気に計算時間が短縮される。一問あたり10秒もかからない だろう。普通はここまでできれば十分だが、さらに効率を上げることを考える。
ここから先はなかなか極める過程を列挙するということは難しくなる。 足し算の計算時間を短くするのに必要なポイントを挙げ、それに対する改善方法を 示すことにする。計算を早くするポイントとしては以下のものをあげる。
- 問題を見てから答えを思い出すまでを早くする。
- 答えを書く時間を短くする。
- 集中力を鍛える
問題を見てから答えを出すまでを早くするには、反復練習を行えば良い。しかし一般的には計算するときに、音声を介在していることが多い。 例えば足し算をするときに「にぃーたすさんは、ご」と頭の中で言っているのでは効率が悪い。声に出しているならなおさら効率が悪い。 音声を介さずに式を見ただけで数字がイメージできる必要がある。これは意識して練習する必要が ある。式を見て、一瞬で答えのイメージが浮かぶまでひたすら反復練習する。
次にイメージした問題の答えを書く時間の短縮について考える。まずはきれいな字では遅い。 早く答えを書くためには汚い字だが最低限判別できる字を書く必要がある。 さらに書く時間を短縮しようと思えば、数字の書き順を最適化することも考えられる。 4、5、7は二画なのでこれを一筆で書けるようにする。早く書くと2と3の区別が難しくなるので、 区別できるように書く練習を意識的にするなどの対策が必要になる。
そして問題を見て一瞬で答えをイメージし、素早く書けるようになったら次は先読みを行う。 ある式を見て答えを書いて、次の式を見て答えを書いてという直線的なやり方では壁にぶつかる。 これを越えるために、ある式を見て答えを一瞬でイメージしそれを書きつつ次の式の答えを イメージし、今書いている式の答えが書き終わったらすぐに次の式の答えを書くようにする。 もちろん次の式の答えを書いている時は、次の次の式の答えをすでに考えている。
このように先読みをすれば、手が常に動き続けるという状態になる。 物理的には間違える事無く手を動かし続ける、つまり答えを途切れることなく書き続けるのが最速だ。 この状態になるためには意識的に自分の計算方法を改善し、相当な反復練習が必要となる。 これはスポーツの練習に通ずるものがある。
そしてさらに早く計算を行うためには答えを書くという動作の速度を上げるしかない。しかし書くという動作を速くすることには限界がある。 それならば書かずに、例えばパソコン上でキーボードを用いて入力するという方法もある。 書くという動作よりもキーボードを用いて入力する方が極めれば早いと思われる。 さらにキーボード入力でもテンキーを用いるのでは無く、最適に数字キーを 再配置すればさらなる効率化が図れる。最終的には脳波で・・・なんていうことも将来的にはあるかもしれない。
そして技術的な部分と共に、精神的な部分も強化する必要がある。短時間で計算 を行うには集中しなければいくら技術的に優れていても速く解けない。計算をするときにすぐに集中できる状態を作れるようになる必要がある。また、1度に多くの計算を行う場合は疲れのため、無意識に計算ができずに音声を介在しがちである。これを克服するにはひたすら反復練習をするしかないだろう。
このように一桁の足し算であっても、それを極めることは大変難しく高度な事が必要で、時間がかかることがわかると思う。
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